クリニックのスタッフ面接で良い人材を見分ける4つのポイント|優秀な人材採用法Point
昨今、新規開業であっても、多くの人材の応募を受けることは稀になってきています。
ましてや応募書類が山積みになっても、本当に良い人材を見抜くことは難しいものです。
スタッフの採用に失敗してしまうと、教育コストの増加や職場環境、雰囲気の悪化など、クリニック経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そこで、応募書類のチェックポイントから面接時の質問内容、長く働く人材を見分ける秘訣まで、優秀なクリニックスタッフを採用するための4つのポイントについて具体例を交えて説明します。
その1:応募書類から見抜くポイント

応募書類は、応募者の人柄やスキルセットを把握するための最初のステップになります。限られた情報から効果的にスクリーニングを行うために、下記のポイントを踏まえて確認することが重要になります。
職務経歴書の確認事項
職務経歴書からは、これまでの経験やスキル、キャリアプランなどを把握できます。特に以下の点に注目しましょう。
経験年数と担当業務内容
経験年数は、単なる年数だけでなく、その中でどのような業務に携わってきたかが重要になります。クリニックでの実務経験の有無はもちろん、受付、医療事務、看護助手など、担当業務内容を具体的に確認することで、クリニックのニーズとのマッチング度合いを判断できます。例えば、電子カルテや特定の医療機器の操作経験があれば、即戦力として期待できるでしょう。また、経験年数が浅くても、担当させたい業務内容がクリニックの求めるスキルと合致している場合は、積極的に採用を検討する価値があります。
退職理由の分析
退職理由は、応募者の仕事に対する考え方や価値観を理解する上で重要な情報です。「キャリアアップを目指して」、「より専門性を高めたい」といった前向きな理由であれば問題ありませんが、「人間関係がうまくいかなかった」、「労働時間が長かった」といったネガティブな理由である場合は、注意が必要です。
退職理由の真意を丁寧に確認し、クリニックの環境に適応できる人材かどうかを見極めましょう。転職回数が多い場合は、それぞれの退職理由と在職期間にも注目し、早期退職の可能性を考慮する必要があります。
志望動機の確認事項
志望動機から応募者のクリニックへの関心度や仕事への熱意を測ることができます。形式的な内容ではなく、具体的なエピソードを交えて書かれているかどうかも重要なポイントです。
仕事への熱意
仕事に対する熱意は、応募書類全体から読み取ることができます。特に志望動機では、どのような医療サービスを提供したいか、患者様とどのように接したいかなど、具体的なビジョンが示されているかを確認しましょう。過去の経験やスキルをどのように活かしたいか、将来的なキャリアプランについても触れられていると、より熱意が伝わりやすくなります。
また、資格の取得を目指しているなど、スキルアップへの意欲も確認しておきましょう。
確認項目 | 確認ポイント |
---|---|
経験年数と担当業務内容 | 経験年数だけでなく、担当業務内容を具体的に確認。 電子カルテや医療機器の操作経験がある場合は即戦力となる可能性が高い。 |
退職理由 | 退職理由の真意を確認し、クリニックの環境に適応できるかを見極める。 転職回数が多い場合は、退職理由と在職期間にも注目。 |
クリニックへの理解度 | なぜ当院を選んだのか、具体的な理由が示されているかを確認。 |
仕事への熱意 | どのような医療サービスを提供したいか、患者様とどのように接したいか、 具体的なビジョンが示されているかを確認。スキルアップへの意欲も確認。 |
その2:面接で見抜くポイント

面接は、応募書類では読み取れない人材の資質を見極める重要な場になります。
限られた時間の中で、効率的に見抜くためのポイントを3つのカテゴリーに分けて解説します。
コミュニケーション能力
クリニックスタッフにとって、患者様と円滑なコミュニケーションを取れることは必須条件になります。患者様は不安な気持ちで来院されることが多いため、安心感を与えられるような温かい対応ができる人材を採用したいものです。そこで、面接では以下の点に着目しましょう。
言葉遣いや態度
丁寧な言葉遣いができるか、適切な敬語を使えるかは、クリニックスタッフとして必須のスキルになります。面接時の言葉遣いや態度から、普段のコミュニケーション能力を推し量ることができます。また、アイコンタクトや相槌、笑顔など、非言語コミュニケーションにも注目することで、患者様への共感力や傾聴力を見抜くことができます。
人柄
クリニックはチームワークが重要となる職場になります。
他のスタッフと協力し、円滑な人間関係を築ける人材であるかどうかも重要なポイントになります。
協調性
チームワークを重視しているかどうかを確認するために、過去の経験におけるチームでの成功体験や失敗体験、それらから学んだことなどを質問します。
また、人間関係についてどのように考えているか、どのような役割を担うことが多いかなどを聞くことで、応募者の協調性を判断する材料を集めましょう。
責任感
責任感の強さは、医療現場では特に重要になります。
業務を最後までやり遂げる責任感、ミスを犯した際の対応、困難な状況に直面した時の対処法などを質問することで、応募者の責任感の強さを評価できます。
過去の経験を通して、どのように責任を果たしてきたか、また、どのような場面で責任を感じるかを具体的に質問することで、より深く理解することができます。
スキル
クリニックで働く上で必要なスキルは、職種によって異なります。
看護師、受付、医療事務など、それぞれの職種に必要なスキルを事前に明確にしておき、面接で確認しましょう。
基本的な医療知識
看護師など職種によっては専門的な医療知識が求められます。基本的な医療用語の理解度や医療に関する法令の知識などを確認することで、即戦力となるかどうかの判断材料になります。
また、最新の医療情報に対する関心の高さや自己学習への意欲なども合わせて確認しましょう。
PCスキル
電子カルテの入力や予約システムの操作など、PCスキルはクリニックで働く上で必須になります。
Word、Excelの基本的なオフィスソフトの操作スキルに加え、医療事務であれば電子カルテ・レセコンの操作経験なども確認しましょう。
具体的な操作経験を質問し、どの程度のスキルを持っているかを評価します。
評価項目 | 確認ポイント | 質問例 |
---|---|---|
コミュニケーション能力 | 患者対応、言葉遣い、態度、非言語コミュニケーション | 患者様とのトラブル対応経験、クレーム対応経験、チーム内でのコミュニケーションで工夫している点 |
人柄 | 協調性、責任感、ストレス耐性 | チームで仕事をする上で大切にしていること、困難な状況にどのように対応してきたか、ストレス解消法 |
スキル | 基本的な医療知識、PCスキル、専門スキル | 医療事務資格の有無、電子カルテ・レセコン操作経験 |
上記以外にも、クリニックの規模や診療科目、経営方針などによって、求める人物像は異なります。自院のニーズに合った人材を採用するために、評価項目や質問内容をカスタマイズすることが重要になります。
その3:クリニックの理念やビジョンへの共感

クリニックの理念やビジョンに共感する人材は、仕事へのモチベーションが高く、長く働き続けてくれる可能性が高くなります。
面接では、クリニックの理念やビジョンを明確に伝え、共感度を確認することが重要になります。
応募者の価値観とクリニックの理念やビジョンが一致していれば、より高いパフォーマンスを期待できます。
クリニックの理念やビジョンを伝える
クリニックの理念やビジョンを伝える際に、なぜその理念やビジョンを掲げているのか、どのような未来を目指しているのかを具体的に説明しましょう。
ホームページやパンフレットだけでなく、面接の場で改めて説明することで、応募者の理解を深めることができます。
また、理念やビジョンを実現するために、どのような取り組みを行っているのかを伝えることも効果的です。
例えば、地域医療への貢献、患者中心の医療の実践、最新の医療技術の導入、チーム医療の推進といった具体的な取り組みを紹介することで、応募者はクリニックの姿勢をより深く理解し、共感しているかを判断できます。
共感しているかを確認する質問
応募者がクリニックの理念やビジョンに共感しているかを確認するためには、適切な質問をすることが重要です。
一方的な説明ではなく、双方向のコミュニケーションを図ることで、応募者の本音を引き出すことができます。
以下の質問例を参考に、状況に合わせて質問内容を調整しましょう。
質問のカテゴリー | 質問例 | 期待される回答 |
---|---|---|
理念への共感 | 当クリニックの理念である「患者様中心の医療」について、どのようにお考えですか? | 患者様の立場に立った医療の重要性を理解し、共感していることがわかる回答 |
ビジョンへの共感 | 当クリニックは「地域医療への貢献」を目指していますが、あなた自身はどのような貢献をしたいと考えていますか? | 地域医療への貢献意欲や具体的なアイデアが示されている回答 |
価値観の一致 | 医療従事者として大切にしていることは何ですか? | クリニックの理念やビジョンと合致する価値観を持っていることがわかる回答 |
行動への反映 | 当クリニックの理念に共感した場合、あなたはどのような行動をとりますか?具体的な例を挙げて教えてください。 | 理念を理解し、具体的な行動に落とし込める思考力を持っていることがわかる回答 |
これらの質問を通して、応募者が単に理念やビジョンに共感しているだけでなく、自身の価値観や行動と結びつけて考えているかを見極めることが重要になります。
また、質問に対する回答だけでなく、回答時の表情や態度にも注目することで、より深く応募者の本心を探ることができます。
応募者の言葉だけでなく、非言語コミュニケーションからも多くの情報を得られることを意識しましょう。
その4:長く働く人材を見分けるポイント

クリニックの採用活動において、長く安定して勤務してくれる人材を確保することは、組織の成長と安定に不可欠です。
面接では、スキルや経験だけでなく、応募者の成長意欲や定着意欲を見極めることが重要になります。
ここでは、長く働く人材を見分けるための具体的なポイントを解説します。
成長意欲
長く活躍してくれる人材は、常に学び続け、成長しようとする意欲を持っています。
変化の激しい医療業界において、新しい知識や技術を積極的に習得しようとする姿勢は、クリニックの将来にとっても大きな力となります。
学習意欲
医療は日進月歩で進化しています。
新しい治療法や医療機器、医薬品などが常に登場するため、学習意欲の高い人材は、常に最新の情報をキャッチアップし、自身のスキルアップに繋げることができています。
面接では、医学系の学会やセミナーへの参加経験、資格取得への意欲などを確認することで、学習意欲を測ることができます。
向上心
現状に満足せず、より高いレベルを目指そうとする向上心は、成長の原動力となります。
医療従事者としてどのような目標を持っているのか、キャリアアップへのビジョンなどを質問することで、応募者の向上心を把握できます。過去の経験から、どのように成長してきたのかを具体的に尋ねるのも効果的です。
定着意欲
せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまうと、採用コストの増加や業務の停滞に繋がります。
そのため、応募者の定着意欲を見極めることは非常に重要になります。
キャリアプラン
応募者のキャリアプランがクリニックのビジョンと合致しているかを確認することで、長期的な勤務の可能性を判断できます。
クリニックでどのような経験を積みたいのか、将来どのような医療従事者を目指しているのかを具体的に質問し、クリニックでのキャリアプランを描けているかを確認しましょう。
漠然とした回答ではなく、具体的な目標や計画を持っている人材は、定着意欲が高い傾向にあります。
将来のビジョン
キャリアプランと同様に、応募者の将来のビジョンも重要な判断材料となります。
5年後、10年後、どのような自分になっていたいのか、仕事を通してどのような貢献をしたいのかを質問することで、応募者の価値観や人生における仕事の捉え方を理解できます。
クリニックの理念やビジョンと共鳴する将来像を持っている人材は、長く働き続けてくれる可能性が高いです。
項目 | 確認事項 | 質問例 |
---|---|---|
学習意欲 | 学会・セミナー参加、資格取得、書籍購読など | 最近、興味を持って学習した医療系のテーマは何ですか? 今後、取得を目指している資格はありますか? |
向上心 | キャリアアップへのビジョン、目標設定、自己研鑽など | 医療従事者として、どのような目標を持っていますか? どのようにスキルアップを図っていますか? |
キャリアプラン | クリニックでのキャリアパス、具体的な目標など | 当クリニックでどのような経験を積みたいですか? 将来、どのような医療従事者を目指していますか? |
将来のビジョン | 人生における仕事の捉え方、価値観、貢献意欲など | 5年後、10年後、どのような自分になっていたいですか? 仕事を通して、どのような貢献をしたいですか? |
これらのポイントを踏まえ、応募者の潜在的な能力や将来性を見極めることで、長くクリニックに貢献してくれる優秀な人材の採用に繋げることができます。
面接では一方的に質問するだけでなく、応募者の話にしっかりと耳を傾け、共感しながらコミュニケーションを取ることも重要です。
信頼関係を築くことで、応募者の本音を引き出し、より的確な判断材料を得ることができるでしょう。